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'06 AUDI R10 #8

MAKER:MINICHAMPS
MODEL No.:400 061608
SIRIAL No.:
DRIVER:F. BIELA、E. PIRRO、M. WERNER

 エコカーと言えば、国内では電動アシストによるハイブリッドカーが主流ですが、海外ではディーゼルエンジンの車が主流。中でも西ヨーロッパでは全車輛の60%がディーゼルエンジンを搭載しており、その地位を確かなものとしています。しかし、一般的に「ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも性能に劣る」という認識があるのも確かで、それを払拭する為に、兼ねてからモータースポーツにおいてディーゼルエンジンの性能をアピールする事が目論まれていました。そんな中、'98年にM40型、2リッター4気筒のディーゼルターボエンジンを搭載したBMW320dが、ニュルブルクリンク24時間レースで優勝したのは、記憶に新しい所です。
 一方、'00年代に入り、R8の成功でスポーツカーレースの王者に君臨していたアウディは'03年、R8の後継マシンの開発プロジェクトを発足、プロジェクト名は「R10」と名付けられ、ディーゼルエンジンを搭載するマシンの開発に着手しました。
 このプロジェクトの一番の肝が、「ディーゼルエンジン」とその「重量」との闘いであるのは、誰の目にも明らかです。強大なトルクを発生させるディーゼルエンジンは、非常に高い強度をエンジンブロックに要求します。つまり、ボアピッチを大きくする必要があるわけですが、そうすると当然エンジンは大きく、重くなります。同じ出力、排気量ならば、気筒数を増やした(マルチシリンダー化)方が、1気筒辺りの必要強度が小さくなると考えたアウディは、ACOレギュレーション一杯の12気筒エンジンを採用する事を決定。また、レギュレーション上、ターボの加給圧が最も低く(2.94bar)、シリンダー毎の負担が小さい5.5リッターの排気量を選択し、A8 4.2TDIクワトロに搭載されている4.2リッター、90度V8エンジンをベースに1.5倍の長さの12気筒エンジンを開発しました。何故軽量コンパクトな60度ではなく、90度V型エンジンが選択されたのは、少しでも重心を低くする為のようですが、その結果横幅が大きくなってしまった為、リアカウルにヘッドが干渉しないよう、フェアリング処理されています。
 3,000〜5,000rpmと、レーシングエンジンとしては異例の低い回転数で650馬力の最高出力と1,100Nmを発揮するものの、大きく重いディーゼルエンジンを搭載した上、前後の重量バランスを整える為、ホイールベースは2,980mmと他に類を見ない程大きなマシン(全長はレギュレーション一杯の4,650mm)となったR10には、強度の高かったR8用とは異なり、脆弱、軽量化されたカウルが装着されました。リアウィングの支柱が最近主流のリアカウル左右端ではなく、ミッションに直結されているのも、リアカウルの強化(重量増)を嫌った為でした。
 '05年12月13日に正式発表され、翌年3月のセブリング12時間レースでデビューしたR10は、強大なトルクにドライブシャフトやミッション等の駆動系が耐えられず、また、発生する巨大な熱量には冷却系が悲鳴を上げますが、2号車が優勝を飾り、ディーゼルエンジンを搭載したスポーツカーが耐久レースに勝利するという歴史的な偉業を達成して、本命のル・マンに乗り込みました。
 7号車にはR. カペッロ、T. クリステンセン、A. マクニッシュが、8号車には、F. ビエラ、E. ピッロ、M. ベルナーが搭乗し2台体制で挑んだ'06年のル・マン、直接のライバルであるはずのペスカロロのペースが思うように上がらない中、早々にアウディが1-2体制を築きます。途中いくつかのトラブルがあったものの、ペスカロロ以下のライバルが1周辺り3分40秒前後、1スティント12〜13周で走行する中、R10は1ラップ辺り3分35〜38秒で走りつつも、ディーゼルエンジン特有の燃費の良さを武器に、1スティント15〜16周という驚異的なパフォーマンスでライバルを寄せ付けません。結局途中でミッション交換を行ったものの、その他はノントラブルという安定性の高さで8号車がル・マン史上初めて、ディーゼルエンジンによる優勝を成し遂げたのでした。
 左のモデルは'06年のル・マンで優勝したアウディR10の8号車で、ミニチャンプス製。R10はスパークからも発売されていますが、エッジの鋭さとデキの安定度の高さからミニチャンプス製を選びました。デキは標準的なミニチャンプスのクオリティで、特に問題なし。スパーク製の方がシルバーの鈍い発色が美味く再現できているように感じますが、ミニチャンプス製の色に問題があるという訳ではないので、好みで選んで良いと思います。

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