Home > SUPER GT 2005~2009 > '06 CUSCO SUBARU ADVAN IMPREZA #77
'06 CUSCO SUBARU ADVAN IMPREZA #77

MAKER:EBBRO
MODEL No.:897
SIRIAL No.:
DRIVER: K. KOBAYASHI、T. TANIGAWA

 '97年のスポーツランド菅生で開催された最終戦からインプレッサでGT300クラスにエントリーを続けているクスコ・レーシング。その実態はダートラやラリー、ジムカーナで数多くの実績を残すキャロッセです。当初はGC型インプレッサWRXの2ドア仕様をベースに、4WD車のウェイトハンデを避けて、敢えてFR化したマシンを投入。得意のダートラで培った高いボディ剛性のノウハウを注いだマシンは、(2ドアとは言え)セダンベース特有の空力性能の悪さと、ダートラに較べて遥かに速いレーシングスピードでの空力セッティングの難しさ、そしてSTIチューンのエンジンのアンダーパワーに苦しめられますが、コンパクトさを活かした鋭いコーナリングを武器にシーズンを闘い続けます。
 前年市販車がGD型(通称「丸目」)にモデルチェンジしたのを受け、'02年にはGTマシンもモデルチェンジ。GD型は4ドアのみの設定の為、本来2ドア車輛しか参戦できないGT選手権への参戦は認められませんが、'03年からレギュレーションが改定され、「姉妹車種を含め2〜3ドア車の設定がない場合、4ドア車の参戦も可能」となり、これを前倒しして「特認車両」として参戦できることになったのでした。
 以後、'03からは「涙目」になり、'04年には駆動系もトランスアクスル方式に変更。'05年のRd.4からはGD型最終の「サバ顔」へフェイスリフトします。しかし、この年のクスコ・レーシングは不本意な成績が続き、小林 且雄、谷川 達也というコンビを持ってしても、リザルトで1ケタに入ったのは1度きり。遂にはそれまで延ばしていた連続完走記録も「13」でストップしてしまいます。
 そこで、クスコ・レーシングは翌'06年シーズン前半、レースへのエントリーをストップします。そしてその間に新たにマシンを開発するという大英断を下します。この年駆動方式によるウェイトハンデが撤廃される事を受けて、マシンを4輪駆動化する為です。
 ベースとなるインプレッサの4輪駆動システムは、「シンメトリカルAWD」と呼ばれるもので、FF横置きエンジンでは得られない、コンパクトで縦置きが可能な水平対向エンジンならでは利点を積極的に活用したシステムです。エンジンからミッション、トランスファー、プロペラシャフト、リヤデフという駆動を構成するパーツが一直線上に左右対称に配置されており、重量バランスに優れている点がウリですが、駆動をミッション後ろにあるセンターデフを介して前後に振り分け、それぞれフロントデフ、リアデフを通して前後のタイヤを駆動させています。市販車ではスペースの問題から、エンジン、ミッション、センターデフ、フロントデフはエンジンルーム内にマウントされています。しかし、クスコ・レーシングのインプレッサは既に'04年にトランスアクスル化されており、ミッションはリアデフと共に車輛後方にあり、市販車と同様のシステムを採用するのは難しい状態にありました。そこで考えられたのが、「トランスアクスル方式シンメトリカルAWDシステム」でした。
 エンジンから得られる駆動をメインのプロペラシャフトを用いて、トランスアクスル方式の(車輛後方にある)ミッションとその上方にあるセンターデフに伝え、リア用の駆動はそこから直ぐ後ろにあるリアデフへ届けられます。一方、フロント用の駆動は、センターデフから伸びる、メインプロペラシャフトの上に通された2本目のプロペラシャフトを用いて車輛前方にあるフロントデフへと届けられます。つまり、車輛前後を2本のプロペラシャフトが往復するというレイアウトです。水平対向エンジンならではの低重心をスポイルしない為、フロントデフはエンジンの真上(!)にマウントされており、そこから左右のタイヤへと駆動が伝えられます。
 また、サスペンションは'05年仕様の前後ダブルウィッシュボーン式を踏襲しているものの、アウトボード式から、プッシュロッドとロッカーアームを使ったインボード式へと変更されており、バネ下重量の低減が成されました。
 こうして開発された世界初の駆動方式を持つインプレッサは、'06年のRd.5、菅生でデビューを果たすものの、ウェット路面だった練習走行ではAWDの駆動力を活かしてセカンドタイムを記録するものの、基本的にアンダーステアが強く、折角の駆動を充分に活かしきることができません。結局リングギアのトラブルでリタイアとなり、ほろ苦いデビューとなりますが、その後もステファン・サラザンをテストドライバーとして迎える等して、セッティングが続けられ、アンダーステア対策としてリアタイヤの外径を小さくしたRd.7で7位、Rd.8で9位入賞を果たしますが、如何せん時間が足りず、翌'07シーズンにはドライバーラインナップを変更。3連続シリーズチャンピオンを獲得している山野 哲也と青木 孝行を迎え、その開発スピードに拍車がかかります。
 左のモデルは'06年シーズン途中からGT300クラスに出場した、AWDのインプレッサ77号車で、エブロ製。正直、この4輪駆動システムが初めて公開された時、「ダメだろう」と思いました。フォードのGr.Bカー、RS200を思い出したからです。アレも(エンジンはミッドシップですが)重量バランスを考慮して、プロペラシャフトが前後に往復する4輪駆動システムでしたが、結局部品点数の多さと、システムの複雑さがマシンの信頼性を削ぎ、コンセプトの割には「失敗した」マシンでした。過去、4WDのレーシングカーがFR化した理由には、ウェイトハンデやアンダーステアを嫌った為でもありますが、なによりシンプルにする事による信頼性の確保が大きかったと思うのです。そういう意味で、ウェット路面等の特殊な環境でない限り、今後もこのマシンは苦労するだろうなぁ・・・と思います。まぁ、'06年のFポンみたいに、ウェット路面ばっかり続くって事もあるかもしれないですが・・・(笑)。
 さて、モデルの方ですが、満を持して登場のインプレッサ、非常に良くできてると思います。複雑なヘッドライトも良くできてるし、低い車高とボディのワイド感といい、全体のバランスも良いですね。

inserted by FC2 system