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'09 Audi R15 TDI Audi Sport Team Joest #1

MAKER:Spark model
MODEL No.:S0687
SIRIAL No.:
DRIVER:R. Capello、T. Kristensen、A. McNish

 '06年にディーゼルエンジンを搭載したアウディR10 TDIをによりル・マンを制し、その後も'08年まで王座を守ったアウディ。燃費に優れ、また低回転から幅広い領域でピークパワーを発生する一方で、大きく重たいディーゼルエンジンを搭載する故、劣悪な前後重量配分のマシンでしたが、同じディーゼルエンジンを搭載するプジョーの908がマシンの信頼性やレースマネージメントの点でアウディに及ばず、そのスピードを活かしきれなかった為に、守ることができた王座でもありました。
 ライバルの脱落と自チームの戦略によりなんとか勝利を手にしていたアウディですが、当然マシンの性能において、プジョーに後れをとりつつあるのは感じていた事でしょう。そんなアウディは、'07年から新型マシン、R15の開発に着手しました。
 R10最大の欠点である、大きく重たいディーゼルエンジン。同じV12気筒のプジョーの908がバンク角100度であるのに対し、アウディのエンジンはより重心が高い90度を採用しています。90度というバンク角は、エンジンをストレスメンバーとして使用する場合には最良であると考えられる為、バンク角は90度のまま継続し、気筒数を12から10へと変更。これによりエンジン全長で14%、重量でも数%の軽量化が可能となりました。一方で、気筒数の現象によるパワーの低下が懸念されましたが、これについは気筒内圧力を上昇させる事によりカバー。当然これだけではプジョーのV12に対してアドバンテージを築く事はできませんが、レギュレーションの改定によりディーゼルエンジンのリストリクター径が小さくなった事から、差は小さくなると考えられました。
 そして何よりR15の最大の特徴は、その空力に対する考え、つまりボディ形状にあると言えます。サイドポンツーン前端に設けられたラジエター冷却用に、床下から吸い上げられたエアは、ラジエター通過後にボディ外側に積極的に排出されますが、その排出を的確に行う事により、床下の空気を積極的に吸い出し、ダウンフォースを大量に発生させることができます。その為、R15では、サイドポンツーン前半がほぼ剥き出しの形状になり、そこには大量のフィンが設けられました。まるで肋骨のようなそれは、ボルテックス・ジェネレーター(Vortex Generator:乱流翼)の役割を示します。敢えて乱気流を起こす事により、ボディ表面から気流が剥離するのを遅らせ、空力を安定させる効果が期待できます。主に航空機に使われる技術ですが、ちょっと前にランエボのオプションとしてルーフエンドに取り付けられたりしましたから、ご存知の方も多いハズ。
 こうして完成したアウディR15は、'09年3月のセブリングでのALMS開幕戦でデビュー。勝利を収めるものの、これは作戦勝ちの要素が強く、コースレイアウト上、アウディの方が有利だろうという予想に反し、マシンのスピードでは、プジョーに軍配が上がりました。そこでアウディはこのレース後早急に対策を施します。ノーズ上面にあった2つのスリットは1つになり、リアカウルのマフラー出口付近にあった段差は塞がれ、エンジン用のエアインテークは、ボルテックス・ジェネレーターによる乱気流を嫌ってか、開口部がフロント方向に延長されました。
 そして6月。世界的な不況の影響で、例年決勝の2週前に行われていたテストデーが中止になった中、ル・マンウィークが始まりました。恒例のジャコバン広場での車検の後、プジョーがR15のフロント部分(ノーズに設けられたスリットや、フロント開口部内のフラップ)の造形がレギュレーション違反にあたるとして抗議するという一幕がありました。そんな中、予選では1、3、4、5位をプジョーが占める中、1号車が一矢報いて2位を獲得して、何とか決勝へと望みを繋げます。しかし、決勝が始まると、1号車はアッサリとプジョーにかわされ、1-2-3位を独占されます。その後3号車がスピンして後退すると、3号車は夜を前にしてインジェクショントラブルの為、完全に脱落。さらに3番手を走っていた2号車は21時半頃にクラッシュでリタイヤしてしまいます。なんとか1台残されたアウディの奮闘が期待される中、アウディにまた悪夢が襲いかかります。R15はラジエター前に詰まったデブリに悩まされ、ピットインの度に清掃作業を行うハメに。まるで昨年までのプジョーを再現しているかのようです。結局これが原因でペースを上げることができなくなってしまったアウディは、遂にプジョーに王座を明け渡す事になってしまったのでした。
 左のモデルは'09年のル・マンに登場し、アウディ勢最高位の3位でフィニッシュしたR15の1号車で、スパークモデル製。どんなに他のメーカーのマシンを制作しなくても、ドイツ車だけは作っていたミニチャンプスが、とうとうR15を販売せず、代わりにスパークからの発売となりました。どんどん勢力範囲を広げていっているスパークとは対照的に、ミニチャンプスがやや尻すぼみ傾向にあるのが気になる今日この頃ですが、個人的にはダイキャストに固執している訳ではないし、むしろレジンならではの再現性の高さを評価しているので、問題は無いです。スパークのクオリティも以前と比べたら大分良くなりましたし。
 さて、モデルのデキについてですが、特徴的なノーズ部分の再現性は○。フロント開口部、ディフューザー後端に付けられたフラップやアヤシい突起(?)も再現されてますし、肋骨の中にはきちんとラジエターが入ってます、凄く見難いけど。個人的には、もう少し肋骨がシャープに作られれば良かったと思います。スパークならできるような気がするんですが、期待し過ぎましたかねぇ。

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