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'93 Alfa Romeo 155 V6 TI DTM #8

MAKER:hpi racing
MODEL No.:8041
SIRIAL No.:1 of 3,616 pcs.
DRIVER:N. Larini

 '84年から開催されたDTM(Deuiche Tourenwagen Meinsterschaft)。当初はGr.A規定に則って行われていましたが、'93年からはFIAが発足した新しい車両規格クラス1、2規定を導入。中でもトップクラスとなるクラス1は、連続した12ヶ月間に25,000台生産された車をベースに、2,500cc以下、6気筒以下のNAエンジンで、同一メーカーがラインナップするエンジン形式なら使用してOKというもので、後に激しいメーカー争いにより「F1マシンを超えた」とまで言われるモンスターマシンと化し、大変な人気を博す事になりました。
 ドイツで人気を博していたDTMが'93年から導入したクラス1規定、これにいち早く反応したのがイタリアの刺客、アルファロメオでした。WRCをランチア・ワークスチームとして席巻したジョルジオ・ピアンタを始めとするアバルトのスタッフを吸収したアルファロメオのワークス、「アルファ・コルセ」は、'92年にCIVT(イタリア・スーパーツーリング選手権:Campionato Italiano Velocita Turismo)に155GTAで参戦して圧倒的な力を見せつけると、'93年からはDTMのクラス1規定にステップアップしてきました。CIVTに参戦しながら9ヶ月間で作成した155 V6 TI。その肝は何と言っても「プロジェクト0625」として開発された2.5リッター、V6エンジンでしょう。クラス1規定のレギュレーションの特徴である、「同一メーカーがラインナップするエンジン形式なら使用してOK」というのは、日本のS-GT(JGTC)のように、「同一メーカー、他型式エンジンをスワップOK」という意味ではなく、「そのメーカーが持っているエンジン形式(90度V6、直6等)ならば、その形式を踏襲した新型エンジンの製作が可能」というものです。アルファロメオの場合、ノーマルの155GTAは直4ですが、上級車種の164に60度V6エンジンを持っているので、その「60度V6」形式のレーシングエンジンの開発ができたわけです。
 アルファ・コルセのエンジン開発部門に籍を置き、「ファザー・オブ・エンジン」の異名を取るジュゼッペ・ダゴスティーノによる新設計のエンジンは、ボア・ストローク93.0×61.34mmという超ショートストロークで2,498.79cc、圧縮比12.5:1でウェーバー・マレリのマネジメントシステムにより、23.5m/sの超高速ピストンスピードで、420PS/11,800rpm、30.6mkg/9,000rpmを絞り出します。
 一方このエンジンが搭載されるシャシーとボディは、アバルとでプロトタイプの開発が行われた後、アルファ・コルセに開発が引き継がれました。('93年は)レギュレーションによりベース車輛の基本骨格を残す事が要求されていた為、155GTAのスチール製モノコックに沿ってスペースフレーム状にロールケージのように鋼管丸パイプを這わせてキャビンセクションを構成。これに補助パイプを溶接して剛性を引き上げるという手法が採られています。この追加されたスペースフレームはスカットル部分で終了しており、フロントエンドは量産車の鋼板プレスが残されています。エンジンはここに追加された2本のサブフレームに接続されています。
 サスペンションは、前後ともマクファーソン・ストラット型式を採用。フロントはレギュレーションでベース車輛の型式を維持しなければならないとされているものの、パーツ類はより精度の高いものが驕られており、リアに関しては規制が緩い(ベース車輛が持つ別型式のものに変更可能)為、モディファイが加えられているようです。
 また、駆動方式はランチア・デルタで培った4WDが採用され、サーキットでのドライバビリティを考え、前後のトルク配分は33:67に固定し、ハンドリングの自由度を保つ設定とされました。
 こうして僅か9ヶ月で完成した155 V6 TIは、アルファ・コルセからN. ラリーニ、A. ナニーニの2台、さらにかつてオペルを走らせていたシューベル・エンジニアリングからはサテライトとしてC. ダナー、G. フランシアのドライブする2台の計4台がエントリー。基本的に6速Hパターンのミッションを搭載しますが、ヘリコプター事故で右腕を切断、義手を装着するナニーニ車にはシーケンシャルシフトが搭載されています。このシーケンシャルシフトは、通常のプッシュ・プル式ではなく、長短2本のレバーをプッシュ(長:アップ、短:ダウン)する方式が採られています。
 '93年シーズン前、新型のE36 M3によるエントリーが認められず、アウディに引き続きBMWが撤退。ライバルを失ったメルセデスも撤退を検討したというDTM始まって以来の危機的状態でしたが、イタリアからアルファロメオが唯一のクラス1規定合致車で殴り込みを書けてきた事により、メーカー間の争いが保たれ一安心。雨のゾルダーでの開幕戦で4WDの優位性を証明してデビュー戦を1-2フィニッシュで飾ると、その後はデビュー・シーズンを20戦14勝、6ポールポジション、15回のファステスト・ラップという優れた成績を収め、元F1ドライバーN. ラリーニがシリーズチャンピオンを獲得したのでした。
 左のマシンはN. ラリーニがドライブし、'93年のDTMでシリーズタイトルを手にした155 V6 TIの8号車でhpi製。遂に出ましたhpi製のDTMアルファ!ミニチャンプス製のモデルが長らく某オクで高値で取引されていましたが、一気に値崩れしましたね(笑)。モデルのデキは、流石に後発!技術の進歩も大きいようで、決定版と言えるものだと思います。でも、これは「技術の進歩」というよりも、メーカーサイドの「思い入れ」の勝利かもしれませんね。何となく顎が持ち上がったような感じだったミニチャンプス製と異なり、非常に精悍なフロントマスクをしていますし、レギュレーションで定められた騒音規制(Aスケールで100db以下)に合致させる為、実際の音量よりも計測データが低くなるようにわざと上に向けたマフラー出口の存在感もバッチリです。既に'96モデルの発売も予告されていますから、ホントに楽しみです!!

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