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'96 Alfa Romeo 155 V6 TI ITC #5

MAKER:hpi racing
MODEL No.:8091
SIRIAL No.:1 of 3,712 pcs.
DRIVER:N. Larini

 '93年からFIAが発足した新しい車両規格クラス1規定を導入し、新たな道を歩み始める事になった旧DTMでしたが、シーズン前には、アウディの撤退に引き続き、新型のE36 M3によるエントリーが認められずにBMWも撤退を表明。その結果、ライバルを失ったメルセデスも撤退を検討する事に。その危機的状況を救ったのが、イタリアから来た刺客、アルファロメオでした。
 '92年にCIVT(イタリア・スーパーツーリング選手権:Campionato Italiano Velocita Turismo)に155GTAを投入して成功を収めたアルファ・コルセは、クラス1規定をいち早く取り入れて155 V6 TIを製作。N. ラリーニ、A. ナニーニの2台のワークスの他に、かつてオペルを走らせていたシューベル・エンジニアリングから、サテライトとしてC. ダナー、G. フランシアのドライブする2台をエントリーして、計4台体制でドイツのレースに殴り込みをかけたのでした。155 V6 TIに搭載された、ランチア・デルタで培った4WDシステムの優位性は圧倒的で、デビュー戦を1-2フィニッシュで飾ると、その後はデビュー・シーズンを20戦14勝、6ポールポジション、15回のファステスト・ラップという優れた成績を収め、アルファフォメオは、初参戦にして元F1ドライバー、N. ラリーニがシリーズチャンピオンを獲得したのでした。
 翌'94年、155 V6 TIは、その欠点とされていたフロントヘビーを解消する為、エンジンの軽量化を行いますが、アルファロメオを研究し尽くして登場したメルセデスのニューマシン、Cクラスの前にシリーズチャンピオンを明け渡してしまいます。
 DTMの隆盛に目を付けたバーニー・エクレストンの目論みにより、'95年、DTMは国際ツーリングカー選手権(ITC:International Touringcar Championship)へと格上げさっれました。FIA直下の国際ツーリングカーシリーズは、'88年に終了したETC以来の発足でしたが、この年タイトル奪回に挑むアルファロメオは、全車にニューマチックバルブを採用し、これによりパワーは450PSにまでアップ。また、レギュレーションの緩和により、6速以内であればセミATの搭載も可能となり、前後サスペンションの形式も自由化された事を受け、シューベル、ユーロといったサテライトチームにデリバリーされた155のSTEP 1仕様は、足廻りが従来のストラット式からプッシュロッド式に変更され、TAG/マレリ製のセミATを装備、またパワーアシストブレーキが驕られました。そして新たにマルティニカラーに塗られたマルティニレーシングと、アルファコルセのワークスチームには、高速サーキットでのコーナリング性能を上げる為、四輪駆動を一時的に二輪駆動化する電子制御デフが搭載され、リアサスペンションのジオメトリーが変更されたSTEP 2仕様がデリバリーされました。
 ITCとの併催となったこの年のDTMでしたが、STEP 2仕様のパフォーマンスが思った以上に上がらず、さらにステップ1仕様もいまいちパッとせず、途中'94仕様をモディファイして登場させる始末。結局ドライバーズタイトルは、ITC、DTM共にメルセデスのB. シュナイダーの手に渡り、アルファロメオのタイトル奪取はなりませんでした。
 そして'96年。DTMの名が消え、完全にITCに1本化されたこの年、アルファロメオは遂に弱点のフロントヘビー、重心高を克服すべく、V6エンジンのバンク角を60度から90度へと変更した新型エンジンを開発(シーズン終盤の3戦に投入)。レギュレーションの改訂を受け、重量物の燃料タンクも室内に設置されました。また、もともと他の2メーカーのマシンに較べて前面投影面積が大きい155は、エアロダイナミクスにも力が入れられ、特に床下はベンチュリー効果を狙ったクサビ形状が取られました。この床下で発生するダウンフォースを積極的に利用する為、アクティブコントロールが可能なアンチロールバーによる姿勢制御が試みられましたが、反応速度が遅かった為アクティブコントロールは封印。アンチロールバーのプリロードをアクチュエーターによって制御して、車検時とレース時でライドハイトをコントロールする手法が採られました。
 メルセデス、オペルと比較するとハイテクの点では後れをとった感のあるアルファロメオは、シリーズタイトルこそオペルに取られたものの、'96年シーズンで最多の10勝(オペル9勝、メルセデス7勝)を挙げることに成功しました。
 アルファロメオが'96年仕様の155に投入した数々のハイテク装備は、本来'97年シーズンを見据えた先行投資と言えるものでした。しかし、マシン開発費やITC化に伴う遠征費の高騰により、アルファロメオは'96年一杯でシリーズからの脱退を表明。オペルの脱退もあり、結果的にITCは1年で終焉を迎える事になってしまったのでした。
 左のマシンはN. ラリーニがドライブした'96年仕様の155 V6 TIの5号車でhpi製。'93年仕様に引き続き展開されたhpi製のDTM(ITC)アルファロメオです。'96年仕様と言えば、より迫力が増したエアロパーツが特徴ですが、既にカナード翼というより、ウィングと言えるようなフロントバンパーサイドのエアロパーツを始め、Aピラーに付けられたシールド等、クオリティの高さは相変わらず。ただ、こう全体の再現性が高いと、ちょっとした事が気になってくるもんで(笑)、フロントフェンダーアーチ上のルーバーが黒で印刷処理されてのが・・・。穴が空いてるのを表したかったんでしょうが、本来正面からは穴が見えないルーバーをこのように処理してしまうと、正面から見た時にもルーバーが目立っちゃうんですね。実車のルーバーは正面から見た部分は赤で塗られててほとんど目立たなかった訳ですから、色みを変えた赤で印刷しても良かったのではないかと思います。もっとも、きちんと金型で凹凸を再現してもらうのが一番ですが・・・。

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